某月某日
用事があり午前を外出の時間とした。普段は工場で働いていて、仕方のないこととはいえ申し訳ない気持ちになる。用事を早々に済ませ、少し時間があったので久しぶりに近くの川へ釣りに出向いた。この川は以前よく通った場所で、明るい時間こそあまり経験はないが投げ慣れていたこともあり、躊躇せずにルアーを投げた。こんな川べりに一枠幅の柵なんぞ立ててあったかと気にしながら数投。魚からの反応もなかったので帰宅しようと片づけを始めたところ恐ろしい勢いで車が一台入ってきてその川べりの柵の前で止まった。あまりの驚きでその車から降りてきた爺さんを眺めることとなったが、その爺さんが降りてきたなり当たり前のように柵の位置を好きなように調整し、釣り竿を立てかけアタリを待ち始めた。どうやら不自然に備え付けられていた一枠幅の柵はこの爺さんの持ち物らしい。
この時間のこの場所はわしのものじゃ。近づくんじゃない。と言わんばかりの態度にこの爺さんの寂しさが感じられたある日の川べり。