エリックドルフィーと臨床美術
自由とは不自由なもので
きっかけがあってはじめてこころが動き
身体が反応する。
エリックドルフィーの渇いた熱量と
それに呼応するサウンドに揺さぶられ
新しい自分と出会う。
きっかけはどんなことでも構わないのかもしれない。
last date
文字通り晩年(Last Date)の作で、公式アルバムとしては遺作である。ブッカー・リトルやジョン・コルトレーンらとの共演作品でも独特な音使いによる非常に個性的なアドリブを展開する奇才、エリック・ドルフィがオランダを訪れ、現地の優れたジャズ・ミュージシャンらと共演したライヴ録音。
アルト・サックスのほか、フルートなども操るマルチ・リード奏者ドルフィのトレード・マークでもある、バス・クラリネットから始まる「エピストロフィー」の孤高のユーモア感。一方うって変わって美しい音色を聴かせるフルートは、バラード「ユー・ドント・ノー・ホワット・ラヴ・イズ」で堪能できる。ピアノのミシャ・メンゲルベルグもドラムのハン・ベニンクも、後のヨーロッパ・フリー・ジャズ界を背負って立つ逸材だが、ここではドルフィを立てる伴奏が素晴らしい。
ラストにはドルフィの肉声が。「音楽は空(くう)に消え、二度と捉えることは出来ない」と、ジャズの本質を語る。この27日後、ドルフィは祖国に帰ることなく、ベルリンにて死去。(高木宏真)