倉庫音楽
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伏木の街で誰彼となく楽器を持ち寄り、ただ心ゆくまで合奏に興じたい。それだけの望みなのに、どうもいけない。余計な邪念が春の埃のように頭の中に舞い込むのである。
本格の師を仰ごうにも、私にはそのための時分もましてや懐の余裕も持ち合わせがない。名人の真似事すらおぼつかぬ身で、変に小理屈をこねては独りよがりの音を絞り出している。
三月の陽光にさらされ、得体の知れぬ焦りと空っぽの財布を交互に眺めては、我ながら世話のないことだと溜息をつくばかりである。
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