理想と現実
演劇がすべてと言わんばかりでそれ以外のことはどうにも不器用な男永井と、大学に通いながら与えられた環境を目一杯楽しもうとする女沙希の恋愛物語。応援してくれる沙希の笑顔に救われながらも、思うような評価を得られず自信を失っては苛立ちを抑えられなくなっていく永井の態度に、本を投げ捨てたくなってくるほどの腹立たしさを感じる人も多いかも。結末はまあこうなるわなといった感じですが、最終しっかりと納得させてくれる部分も控えているのでぎりぎりのところまでは耐えて頂きたい。作品に関して激しく共感できる人と激しく嫌悪感を抱く人と、割と明確に別れそうな印象。
程度こそあれ。期待と怒りの先にある攻撃性(どうしてわかってくれないんだ)や、信頼と恐れから求められる服從心(こうするべきだろ)などは我々の実生活でもありがちで、感情と行動の不一致が招く結果も確かになと、いろいろわかり易く感じさせてくれるこの本作。お笑いの魅力でもあるクドくなりがちな文章を楽しみながら人間関係が学べます。
劇場 (新潮文庫) 文庫 – 2019/8/28
高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
個人的には永井の元から存在する卑屈さや自信の無さ、強くこだわりを持つ出どころが気になってます。こだわるのは自信がないからなのかなあ。なぜそんなに自信がないんやろかなあ。又吉さんに会って人物設定など聞いてみたいなあ。やっぱり心の動きを味わうなら純文学がいいなあ。ところで純文学ってなんなんだろうなあ。