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読むという行為はただ字面を流すことの他に、その文章について何かを感じたり裏側や本質をくみ取ることまでを含んだものであり、読むためにはどれだけかの想像力が必要になってくる。

先日、とある会場で出会った読書家さんとの会話の中でえらく感動したことがあった。読書のおかげで相手の気持ちを考えることが出来るようになり、苦手だった人付き合いが気が付けば上手くいくようになっていた経緯があるという。これは読書を続けてきたことで常に想像する癖がついたからだと思うが、聞くところによると近現代文学、なかでも純文学を読み始めた頃に大きな気づきがあったらしく、以降読書が本当に楽しめるようになったとのことだった。読書という行為が上手く実生活に活かされた素敵な事例である。


人間失格 (新潮文庫)

「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。ひとがひととして、ひとと生きる意味を問う、太宰治、捨て身の問題作。

想像力を養うといってもそんな簡単にできることではないと思うが、そのこと自体がどれだけ大切で素敵な行為かは身をもって経験している。実際のところ想像力を働かせ相手の事を少し考えるだけで避けられる問題はとても多い。しかしながら同じ読書家であろう人達の中にも相手の事など何も想像しなく、自分の価値観だけで物事を判断し、それを一方的に周囲に押し付けては揉めることを繰り返す者が多く存在する。これは読むことで得た知識を利用したい自身の欲を満たすためだけの行為であり、自身が損をする勿体ない行動である。議論が必要な時であれば各々好きに意見すれば良いが、日常生活においてまでこういった行動を起こすとなると方々で問題が起こる。読み方というのは人それぞれ違うものであって当然だが、せっかく読むことが好きで同じ読書の時間を過ごしているのであれば、養った想像力を有益なものにした方がよいと感じている。まあこれが当事者からの相談事であればどうしてこんなことになるのかと考えるのが自分の仕事になるのだが。


痴人の愛 (新潮文庫)

きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。

自身でも純文学は好んで読むほうであり、梶井基次郎の「檸檬」を楽しめるようになって以来、読み方が変わったのではないかと振り返る。これは明らかに自身の経験値が上がり、少しでも想像力が増えた為だと思っている。


檸檬 (新潮文庫)

31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。

読書の目的はそれぞれにあってその時々で必要なものを選べばよく、過去に何を読んでいようが読んでなかろうが他の人には関係がない。あれも読んでいないのか、これも知らないのかと一方的に読書とはこういうものだと価値観を押し付けては好きなものを嫌いにさせてしまうことにも繋がりかねないが、これもまた想像力が足りないことから起こるものだと思う。

読書にはいろんな作用がある。知識だけを増やしても経験だけを増やしてもバランスが悪い。たまにはこういった純文学に触れて自身を振り返ってみるのも面白いのではと、秋の夜長に独り思ってみる。


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