他者意識
「今出歩いてる奴らはみんな死ね」「自己責任なんだから感染しても病院へ行くな」と、どこにぶつけていいのか分からない気持ちをおじさん達は「そうかそうか」とサンドバッグさながら聴き受けているのだが、これらは「人に迷惑をかけるな」の言い換えであるにせよ、一方的に言っていたところで揉め事は店の奥にある在庫とおじさんの白髪の様に一向に増えるばかり。
ここだけを見ると自分の思い通りにならないストレスをただ人に向けて発散してるだけで、何故わざわざ店に来たり連絡までして吐き出すのかといえば何か周囲に言いにくい理由があると想像できるが、それは所謂孤立状態にあると言えなくもない。つまるところ摩擦の起きやすい体質と考えられる。
一方的に意見を言っては共感を得ようとする行動の裏には自分の「俺は間違っていない」という正しさを認めて欲しい気持ちが見え隠れしている。いわゆる承認欲求である。どこかの何かが渇いてるのね。
しかし今はそのどこの何が渇いてるかは置いておくことにして。
自分の思い通りにならないことはそこかしこに存在するが、このストレスは他者意識を養う事で幾分も軽減される。何故この他者意識が持てないのかは各々の環境がそうさせてきたのだろうが、気持ちさえあれば今からでも養うことはできる。
その方法とはやはり読書であり、物語を追うものが手っ取り早くて好ましい。様々な登場人物の環境や行動を疑似体験し、その心の動きを巧みな文章で味わいながら自身の気持ちと比較し他者の気持ちを想像する材料にするのだが、特に連作ものと言われる作品は双方の視点から明確に書かれているため素材として分かりやすい。勘違いや思い込みから発展する気持ちのすれ違いは日常においてもごく当たり前にあり、ことによっては修復不可能な関係を作ってしまうこともあるが、こういった背景は常套手段のようで、作品も無数に存在するらしい。らしい。そこまでの量を読んでないので言い切れないおじさんを許しておくれ。
目の前で自分の理解を超えるような事が起こっても双方が一方的に意見を押し付け合うのではなく、お互いがどんな立場からそのような発想に至り行動したかの背景を考えると、相互理解に繋がり少しでも過ごしやすくなるのではないかと思う。他者意識。この先最も必要なものだと感じてます。
どんな活かし方も自分次第。やはり本は良い。皆様でもっと本を読みませんか?