EK日記8
新型コロナウィルスのパンデミックが起こってから3年目に入った。このことによってウィルスという存在を意識したひとが多いと思う。ウィルスとは何か。
一般にウィルスの存在が確認されたのはタバコモザイクといわれる植物の病気からだ。学校で使うことのできる光学顕微鏡では見ることができない。電子顕微鏡でしかみることができないもの。それは、DNAかRNAと膜でしかなく、果たして生物と呼べるかどうか。福岡伸一の『生物と無生物のあいだ』によれば、ウィルスは生物とはいえず、無生物ともいえず、その間といえる。つまり、よくわからないものだ。
がんのことを「悪性新生物」という。なぜかというと、本来細胞にあるはずの抑制を失って暴発的に増殖し続ける細胞だからである。コントロールを失って、ひたすらに増殖する。その様が生き物のようであるから、新しい生物と名付けられた。エネルギーは3倍消費する。これも、生物といえるかどうか。
ウィルスに話を戻す。
「with コロナ」というスローガンにはずっと違和感がある。なぜなら、私たちを取り巻くものは「コロナ」だけではないから。
例えば、夏風邪を引き起こすものはたくさんある。ウィルスではコロナももちろんだけれど、EBウィルスやアデノウィルスなどもある。これらのウィルスは咳や発熱など、いわゆる風邪症状を引き起こし、数日で軽快してしまうのでそれほど問題とされない。しかし、近年ではこれらの風邪ウィルスが体内に潜伏し、数十年後に様々な疾病に関与している可能性があることが示唆されている。例えば、食道や胃など消化器系のがんや、肥満にまで至る。潜伏するものとしてよく知られたものといえば、帯状疱疹ウィルスがあるだろうか。
人間の遺伝子の8%はウィルス由来のものだということが明らかになっている。つまり、ヒトは太古の昔からウィルスと関わっていたということ。単に最近になってヒトの方がウィルスという存在に気付いただけ、ととらえることができる。
ウィルスだけではなく、細菌も含めて、ヒトはたくさんの目に見えない生き物と共に生きている。ヒトの身体には300兆といわれる微生物がいるという。これは身体を作っている細胞の約8~9倍にあたる。気づくかどうかに関わらず、私たちは目に見えないものと当たり前に生きている。
マスクやワクチンは個人の自由権利として、そういった状況にあるのだということを認識するかどうかが公衆衛生には重要なことだと私は思っている。
書き手 ek